2025年10月に新しく“ヴァイブス演劇”を提唱。
[関田育子]はこれまで「広角レンズの演劇」を掲げ、カメラやレンズの特性を引用しながら演劇作品の創作を行ってきました。『under take』の上演に際し、ステートメントをアップデートし、新たに「ヴァイブス演劇」を掲げることになりました。「現代物理学」における世界の捉え方を引用し、舞台と観客の間に生じる感覚について再考することで、より新たな「演劇」の発見を目指しています。
「ヴァイブス演劇」とは
わたしたちの周りに存在するすべてのものは目に見えない“ふるえ”によって成り立っている。
現代物理学の「超弦理論」では、この“ふるえ”が、物質がどのような存在であるかを決めていると説明されている。
たとえば俳優の身体も、舞台上ではひとつの“ふるえ”として存在する。俳優の演技はその“ふるえ”を強めたり弱めたりしながら、劇場全体に広がっていく。その波は、同じ空間にいる観客の中に潜んでいる小さな“ふるえ”にも作用する。
観客はこの感覚を頼りに、舞台で起きていることを鑑賞するうちに、目の前の出来事を“理解”できる瞬間が訪れる。このとき、発する側と受け取る側の“ふるえ”が合致する。
“ふるえ”(=vibration)を通して出来事を捉え直すことで、新しい世界の理解の仕方が生まれるかもしれない。
もし、自分自身の“ふるえ”をはっきり感じられなくとも、演劇空間には自分以外の観客も存在することで、他者の“ふるえ”に触れることができる。劇場内に無秩序に広がったvibrationsを演劇という一つの波に乗ったり、あえて乗らないことを選択しながら鑑賞する体験を私たちは「ヴァイブス演劇」と呼ぶ。
「広角レンズの演劇」
「広角レンズの演劇」とは、
俳優の身体と劇場の壁や床が観客にとって等価に見えることを目指し、
その結果、生活の中で有用性のもと規定された物事や他人との距離感、
あるいは物事に対する遠近法を一度解体し、
観客の新たな視線を構築する演劇作品をつくる試みである。
上演を通じて観客が獲得する新たな知覚は、
観劇時だけでなく、生活の中で一般化や固定化された
「価値判断」を省みる契機に繋がると考える。